入獄記念

 

悲しみがそこかしこに積もって、きちんと息をすればするほど何もかも残酷です。鼻から入る冷気が瞳の奥をひどくばらばらに破壊して、涙なんて綺麗なものは出なくなった我々の目にただ一つの希望を与えたようでした。

私はこの人になりたい!この人になりたいんだ!いついつまでも人間と自分との差異について、もそもそと悲しんだり諦めたりしていて、どこにいったって何をしたって誰と知り合ったって私は平々凡々です。女として優れているわけでもなく、たいして自分の外見を変える努力もしていないままで、誰かに好いてもらおうだなんてちゃんちゃら可笑しい話だったんだ。セックスもオナニーも今は本当に遠いところにある何かで、私の手に負えるものではありません。

あの人は私の頭の足りないところが我慢ならなくなったのやも知れん。きちんとした手続きや契約や関係が無かったからこそ、そこに一切の恋愛感情はなくただただ100%の信頼があったからこそ、私は面白がられなくなったのがこんなにもつらいのだ。

いままでいられた心地よい空間がじわじわ空中分解されていき、いつの間にか私たちは別々の場所に押し流されていくのだろうかと不安で不安で仕方ない。私のせいじゃない、私のせいじゃない、と思いつつ、舵を取っていたのはいったい誰だったのか知りたくて知りたくてたまらない。全員を詰問して泣かせなければ気が済まないんだ。

 

こんな状況を打破するには、もう就職も、気に入らない誰か何かに雇われて生活することもやめるしかないんです。

自分の労働が誰かのためになっている!どんな職業だってそう考えることが出来る!だなんて、私に電話越しに言った同い年の青年はあの北の大地でまだ一生懸命に誰かをトレースする日々を送っているんでしょうか?人のためになる労働なんていまの社会であり得るんでしょうか?

非生産的であることが許されなくなったら、待っているのはT4です。

人間が好きだ!人間と関わっていなければ!と思う反面、もうお魚にでもなってしまいたい私は、果たしていつまた誰かに面白がってもらえるのだろうか。好きとか嫌いとかもうどうだっていいんだ。私はひたすらになにかし続けなければならないンだ