サティスファクション・オールグリーン

ダンボールで指が切れてそれがとっても嬉しい気分を運んでくるのってわかる?傷とか跡とか血液は愛だよ。まぎれもなく愛。重たいものはみんな愛。最初はじくじくして痛くて、でもそんな痛みもだんだん身体の中に取り込まれていっていとおしくなっちゃうの。あとは舐めたり甲斐甲斐しく絆創膏を替えてやったりお世話してやるだけでいいんだ。傷は人間の誰にでも等しくあって、みんなそういった自分の持っている瑕疵や多肢をぺろぺろ舐めて自愛しているんだって。ただそれだけなのに、傷ついた傷つけられたってわいわい騒ぐのが好きな人たちっているんだよ。

 

裏切っただの裏切られただのってそんなこと気にしちゃうようになってて、自分から手放したくせして、嫉妬はちゃんと機能しているってわけ。こんなちぐはぐでわがままで不完全な器官だけど、それなりに愛してほしかったり。けどそれはあの人間じゃなきゃだめなのが本当に憂鬱で辛い。でも私が悪いんじゃない。こんなことになっちゃったのはあの二人のせいでしょ。そうやって言い聞かせてないと、あのやっすいメロドラマのワンシーンみたいな空間の凍りつき方を、狭い部屋に流れたあの空気をやり過ごしたり出来ない。タバコもお酒も私を助けてくれないし、セックスしたいけどする相手もいないし、なんだってこんな袋小路みたいな曖昧さに絡めとられてるんだ。みんな死んじゃえ。原発は爆発しちゃえ。資本主義はどっか行け。誰か空から降って来て、私を違う場所に押し流してくれ。